学校での個人面談。自分の子供について、「落ち着きがない、忘れ物が多い、授業を聞いてない。」という先生からの言葉・・・。もしかして、うちの子はADHD(注意欠如・多動症)?
私自身も、身内にADHDと診断された人・グレーな子どもがいます。
今回は、ADHD(ADDを含む)もしくはその疑いのある子どもを、親としてどう学習面でサポートしていけるかを考えていきたいと思います。
ADHDの「わかった!」の勉強法
勉強法の前に、ADHDの行動や脳の特性についてまとめてみました。
- 気が散りやすい→好奇心が旺盛
- 考えがまとめられない→アイディアがよく浮かぶ
- 衝動的→行動力がある、恐れない
- 感情の起伏が激しい→感受性が豊か、繊細
- なかなか仕事に取りかかれない→目標があれば頑張れる
- 融通が利かない→自分を持っている
- やりたくないことには激しく抵抗→好きなことにはものすごく集中する
以上のことを考えて、ADHDの脳の働き方に合った勉強法を考えてみました。ADHDの特性に合った勉強法と言っても、皆に同じ方法が合っているというわけではないので、ここではポイントだけを紹介していきます。
1対1で
気が散りやすい、集中できないという特性があるので、勉強法は集団より個人の方がいいとされています。
勉強する環境も大事で、テレビの音やおもちゃなど集中するのを妨げるものは、周りに置かないようにします。
ADHDと診断されたAくんは、学校では席を立ってしまったり、他の子にちょっかいを出してしまうのですが、ヴァイオリンの個人レッスンでは、立ったままの30分間、先生の言ったことをよく聞いているそうです。先生は優しい感じなので、怖くて従っているのでもなく、本人も特別ヴァイオリンが好きというわけではないにも関わらず、1対1の方が集中しているそうです。
個人レッスンは自分のペースで進み、自分の順番を待っている必要がないので、特に待つのが苦手なADHDの子供には、個人指導の方が断然いいでしょう。
とはいえ、
口を出しすぎると子供が混乱してかえってストレスの原因になるので、気を付けましょう。
休憩を多く取り入れる
ADHDの子供は、すごく好きなことでもない限り、一つのことに集中する時間もずっと短いです。
特に勉強ともなると、**ワーキングメモリーがうまく働いていないこともあり、うまく理解できず、イライラしたり疲れたりしてしまうようです。
休憩を多く入れたら勉強が終わらないんじゃ・・・と思われるかもしれませんが、ポイントは「長く」ではなく、「多く」入れるというところです。
勉強の合間に1回だけ20分の休憩を入れるよりは、4回に分けて5分休憩を入れたほうがいいということです。
できれば、キリのいいところで終わらせて、5分休憩の後は、また次の新しいところをする方が、「また〜?」という反応も少なくなっていいでしょう。
休憩はこまめに入れるようにした方がいいのですが、もし子供が勉強に集中していて止めたがらない場合は、止めさせる必要はないと思います。ADHDの子供は、やりたくないことは先延ばしにする傾向があるのですが、かかりにくいエンジンが一度かかると高い集中力を発揮するそうなので、集中している間は、時間の許す限りさせた方が良いようです。
ステップバイステップでシンプルに
(5+9)+2+8×2=?
という計算問題があったとします。
これを、
「まず、(5+9)と8×2を先に計算します。それぞれ、(5+9)=14、8×2=16となります。そして、14+2+16=32で、答えは32です。」
大抵の子供はおそらく理解できると思いますが、ADHDの子供にはできないことが多いでしょう。一度にいくつも指示をされても、脳がそれを順序立ててプロセスできないので、一つ一つ必要なことだけ伝えるとわかりやすいようです。
先ほどの例を言い換えると、こうなります。
「かっこから計算しよう。(5+9)=14だね。」
「次はかけ算。8×2=16だね。」
「最後に、14+2+16を全部足して、答えは32。」
ADHDの脳には、耳から入る情報より、目から入る情報の方が入りやすいそうなので、それぞれ数字を指差しながらするとわかりやすいでしょう。
目に見える形でわかりやすく
ADHDの脳は、忘れっぽかったり、入ってきた情報を上手く処理できないので、目にパッと入りやすい形で示しておくと、順序立てて行動する手助けになります。
ADHDの傾向があるBちゃんのお家では、朝の支度ですることをチェックリストにして印刷して使ってみたところ、お母さんが何度も言わなくても、自分でだいぶできるようになったそうです。これは、勉強や宿題をするときにも適用できますね♪
チェックリストのテンプレートやアイディアは、多くのサイトで紹介されています。ダウンロードだけでできるものや、100均アイテムなどで簡単に作れるものまであるので、興味のある方は調べてみてくださいね。
こちらの記事では、チェックリストを活用した「おしたくボード」を紹介しています。参考にしてみてくださいね。
ゲーム感覚で
どんな子供もゲームは好きだと思いますが、ADHDの子供には、すぐにできそうな小さなゴールをいくつも設けたほうが、物事をスムーズに行うことができるそうです。
例えば、大きなゴールが「宿題を終わらせる」だとします。
小さなゴールの例は「10分で計算問題5つ解く」「5つの漢字の練習を15分で終わらせる」などです。
ゴールが達成できたらシールを貼るなどのご褒美もいいですし、ハイタッチや拍手などでできたことを褒めるのもいいでしょう。これを小さなゴールが達成できるごとにやります。
前出のADHDと診断されたAくんには、このやり方が合っていて、各課題ごとにタイマーをかけてやっているそうです。なかなか宿題をやりたがらないAくんですが「じゃ、タイマーかけるよ〜。よ〜いスタート!」でスイッチが入ってやる気になることが多いらしいです。ただ、ゴールが達成できないとなると、すぐに怒ったり悲観的になったりするので、ちょっと時間が足りないなと思った時は、お母さんがこっそりタイマーの時間を延ばしています。やる気を出すためのゲームなので、できるだけできるように工夫しているそうです。
とにかく褒める(認める)
実はこれが一番大事かもしれません。
普段からどちらかというと怒られる事の方が多いADHDの子供は、自己肯定感が低いことも多く、小さなことでも褒めていくことで自信を育てる手助けになります。他の子供と比べてできないことも多く、親もどうしても子供のできないところに目がいきがちですが、「え?こんなことを褒めるの?」というところでも見つけて、褒め倒してみては?
褒めると、脳の神経伝達物質のドーパミンが良く出ていい気分になり、やる気も出ると言われています。
ADHDの脳はドーパミンの伝達不足とも言われているので、ドーパミンを増やす事のできる「褒める」は効果があるのかもしれません♪
褒め方は「よくできたね。」ではなく「数字がキレイに書けたね。」というように具体的に褒めた方がいいようです。
褒めまくるなんてムリという方は、できたことを認めると考えて「今日はすぐに宿題やってるね。」と言うだけでもいいと思います。
Cくんのお母さんは、なかなか宿題をやりたがらないCくんを見て、ついイラッとしてしまうことが多く、もう少し穏やかに接することができないかと悩んでいました。
そこで、できるだけ褒めポイントを見つけて褒めるようにしたそうです。まだまだ叱ってしまうことが多いそうなのですが「お、難しい漢字なのに丁寧に書いてるね。」とか「いつもの宿題をやってと言われた時の『ぎゃ〜!』が『きゃ〜!』だったから、進歩だね。」と、とにかく褒めたり認めたりするよう努力していたら、宿題前のバトルの長さも激しさも減ってきたそうです。
ご褒美を使う
上に紹介した事に関連することですが、小さなゴールを達成したら、簡単なご褒美をあげるというのも良いとされています。実際、ADHDの子供向けの行動療法では、この方法がよく使われているようです。
ご褒美といっても、お金を使うものである必要はありません。シールやチケット、ゲームなどの好きなことをする時間をあげたり増やしたりする、親と一緒にやりたいことをする、などでいいそうです。
先ほどのCくんですが、「この問題が終わったら、〇〇ちゃんと遊びに行ってきていいよ〜。」とか、「パパが、やることが全部済んだら、一緒に△△(お気に入りのレストラン)に行こうって言ってるよ〜。」と聞くと、宿題やお片づけ前のグダグダはどこへやら。すぐに取りかかってくれるそうです。
これまで、ADHDの子供の勉強に役立ちそうな内容を紹介してきましたが、ちょこっとだけADHDについて掘り下げていこうと思います。
ADHDの「どうして?」
ADHDは認知度も高く、数多くの専門家によるサイトで症状や治療法については詳しく紹介されているので、ここでは、私たちが感じるADHDの「どうして?」について簡単に触れていきます。
- どうして授業や宿題に集中できないの?
- どうして学校でクラスメートともめるの?
- どうして忘れ物をするの?
これらの「どうして?」は脳の機能の違いから来ていると言われています。
ADHDの脳は、感情をコントロールしたり、必要な時に集中したり、計画を立てたり、優先順位をつけたり、仕事をやり遂げるのが苦手です。だから、上のようなことが起こってしまうわけで、決してしつけの問題ではないんです。
残念なことに、現代では、ADHDの症状を抑えることはできても、無くすことはできないと言われています。
だからと言って、
あきらめることはありません♪
次の章では、ADHDのすごいところを紹介します。
ADHDの「すごい!」
勉強に集中できない、というのはADHDの特性の一つですが、何事にも集中できないわけではありません。
おもしろい!と思ったことには、ものすごい集中力を発揮します。
だから、勉強に集中できなくても、ビデオゲームには集中できるのです。
好きなことにはすごく集中できる、衝動的などの特性から、大人になってから有名になる人もいます。アメリカでは自らのADHDを公表する有名人も多く、日本でも公表した、もしくはADHDではないかと語っている有名人がいます。
- ジャスティン・ビーバー(歌手)
- ジム・キャリー(俳優・コメディアン)
- パリス・ヒルトン(モデル・タレント)
- マイケル・フィルプス(水泳選手・オリンピック金メダリスト)
- シモーン・バイルス(体操選手・オリンピック金メダリスト)
- バッバ・ワトソン(プロゴルファー・マスターズ優勝2回)
- 栗原類(モデル)
- 勝間和代(著述家・評論家)
- 三木谷浩史(楽天創業者)
彼らの多くが、ADHDで苦労しながらも周りに支えてくれた人がいたと言っています。
ADHDの子供の行動の多くは、集団行動が中心の学校生活では問題になることが多く、自己肯定感を抱くことができないまま、持ち前の衝動性を抱えて生きていくことになり、非行に走りやすくなります。
でも、周りに受け入れてくれる人がいれば、自信がつき、衝動性も行動力になり、他の人ができないような偉業を成し遂げたりしてしまうこともあるのです。
発達障害を持つ子供の子育ては、そうでない子供の子育てよりも親子で苦労する傾向がありますが、その子を理解するよう努め、一生懸命向き合えば、将来その子の幸せな人生が待っているというところは、発達障害の有無とは関係ないように思います。
さて、学校では苦労しがちなADHDの子供ですが、発達障害というより脳の働き方の違いと捉えると、
彼らに合った勉強法はあるはず♪
と私は考え、こうして書かせていただきました♪
ADHDのお子さんにあるある、宿題という試練を行う時の癇癪への対策についてまとめた記事もあります。こちらも合わせて読んでみてくださいね。
まとめ
- ADHDの脳の特性を生かした勉強法のポイント
- 勉強は1対1で、邪魔が入らない学習環境を作る
- 休憩を短く多く
- 説明は一つずつシンプルに
- ビジュアル化で、手順も成果もわかりやすく
- ゲーム感覚でスリルを取り入れ、楽しく
- 褒めて褒めて、やる気と自信を育てる
- ご褒美でモチベーションと集中力をUP!
- ADHDは発達障害でもあり、脳の機能の違いでもある
- ADHDの特性を生かして、大成する有名人も少なくない
いかがでしたか?
実際にADHDのお子さんの子育てをしている方々の体験談や独自で調べた内容を元に書かせていただきましたが、少しでもヒントになれば幸いです。
こちらも参考になるかもしれません。良かったら読んでみてくださいね。
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