「ウチの子、いちおう家でも勉強はさせているんだけど、時間はどれくらいが良いのだろう?」
そんなふうに考えたことはないでしょうか。
インターネットで調べてみると、様々な時間数が提示されています。
いったいどれくらいがよいか悩むところです。
この記事では、家庭学習について
- いったいどれくらいの時間数が適正なのか?
- その時間数を効果的に使う方法は?
についてお伝えしていきます。
小学生の家庭での平均勉強時間
周りの皆さんが、お子さんにどれくらい家庭で勉強をさせているのか、気になりませんか?
まずは、平均を見てみましょう。
ベネッセ総合研究所の調査によると、次のようになっています。
小学生の家庭学習の平均勉強時間
平均67分
1年生:56分
2年生:56分
3年生:66分
4年生:71分
5年生:76分
6年生:76分
引用:ベネッセ教育総合研究所「学校外教育活動に関する調査2013」
これには学校の宿題をやる時間も含まれています。
意外と勉強しているなぁ、というのが率直な感想でした。
私、学校の宿題しかしてなーい。
よく言われる目安
子どもたちが通う学校で教わった目安としては、次のような時間がよいそうです。
「学年×15分」
ベネッセの調査からすると少なめに見えますが、これは宿題以外の時間とのことなので、おおむね調査結果と同じような時間数でしょうか。
私が子どものときは次のように聞いた覚えがあります。
「学年×10+10分」
ベネッセ自身では、家庭での勉強時間の目安を次のように提案しています。
「宿題+20分の学習」
引用:ベネッセ 教育情報サイト
いずれにしろ、ウチの子ももっとやらせないといけないなぁ、と思いました。
この記事を読んでくださっている、あなたのお子様はいかがでしょうか?
私、もっと勉強時間、増やそうかな…。
大事なのは時間より集中力と習慣化
ここまで「時間数」を見てきました。
様々な目安がありましたね。
ところで、これ、「時間数」だけを考えていてよいのでしょうか?
もっと重要なことがないでしょうか。
あります。
それは、
「集中力と習慣化」
ですね。
当たり前の話ですが、目安通りの時間を勉強していても、ダラダラやっているのでは意味がありません。
また、「その日はやるけど、次の日はやらない」といったパターンや、「週末にまとめでどかっと勉強する(結果として平均では1日の目安通りの時間になる)」といったパターンも、効果が期待できないでしょう。
- 時間中は、集中して勉強する
- 毎日(ほぼ毎日)、勉強する習慣をつける
これらを実現させたいですよね。
次の章では、それぞれ「集中力」と「習慣化」について述べていきたいと思います。
勉強ってすぐ飽きちゃうよね
毎日やるのヤだなぁ。
集中力を続かせるために
集中力が続く時間
「集中が大事!」
と言っても、人間の集中力には限度があるようです。
一般的な大人の場合、集中力の持続時間は「20分程度」と言われています。
もう少し詳しく見てみたいと思います。
「サーカディアンリズム」
という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
人間には、体内時計が備わっており、時計を見なくても24時間周期がおおむねわかるそうです。
その24時間周期のリズムをサーカディアンリズムと呼びます。
実は、それ以外にも人間の体内には備わっているリズムがあります。
「15分・45分・90分」
というリズムです。
これによると、人間が深い集中を維持できるのは「15分程度」となるそうです。
また、さらには、哺乳類には 「ウルトラディアンリズム」と呼ばれる30 分~4 時間周期のリズムも備わっているそうです。
人間の場合は、これが90分周期で、このリズムで脳の覚醒度が変化します。
具体的には、「覚醒度の高い90分間」と「眠気の強い20分間」が交互にやってきます。
学校の授業を受けていたり、会社で仕事をしていたりするときに、突然、眠気に襲われたことはないでしょうか?
それは、このウルトラディアンリズムのせいかもしれないということですね。
これらの体内リズムや集中力の続く時間を考えると、勉強時間は長ければよい、というものではないことがわかります。
集中力を続かせるために
集中力が続く時間は、15分~20分程度だとわかりました。
とはいえ、これも理想の数字で、実際には、集中を妨げるものが生活の中にはあります。
具体的には、次のようなものです。
- 睡眠不足
- 散らかった環境
- 基本的な体力不足
睡眠不足では、当たり前ですが、十分な集中を保てません。
ですから、夜はしっかり睡眠をとる必要があります。
脳は、視覚によってもっとも情報を収集するので、勉強に必要なもの以外のものが、勉強するときに目に入ると注意がそちらにもっていかれます。
つまり、勉強する部屋や机が散らかっていると、それだけ集中しづらくなります。
(これが整理整頓が重要な理由でもあります。)
勉強中は、同じ姿勢を取り続けますから、ある程度の筋力が必要になります。
ですから、普段から背筋を伸ばし、正しい姿勢で作業することで、基本的な筋力や体力を培う必要があります。
- しっかり睡眠をとる
- 勉強部屋や勉強机を整理整頓する
- 背筋を延ばして、正しい姿勢で作業する
習慣化するために
そもそも、習慣って何?
次は習慣化について考えてみましょう。
週に1日程度の「お休みの日(勉強しない日)」を作るのはよいとしても、「ほぼ毎日」やることは重要です。
習慣化するためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。
その前に、そもそも、習慣って何でしょうか。
簡単に言ってしまうと、「脳の自動化機能」です。
私たちの脳はいろんな役割を果たしています。
そのため、毎日、ものすごい量のエネルギーを消費しています。
具体的な数字を上げると、脳の重さは、大人の場合、体重のわずか2%しかありませんが、1日に消費する全エネルギーのうち16%も消費するそうです。
そして、私たちがものごとを考えたりする役割のほか、カラダを維持する役割(生命活動を維持する機能)があります。
実は、このカラダを維持する役割には、とても大きなエネルギーが必要になります。
ですから、脳は、できる限りエネルギーを節約し、それをカラダを維持するほうに使いたがります。
そのため、同じことを繰り返すときは、できる限り「考える」ことをしないで自動で行えるように「自動化」するわけですね。
これが「習慣化」です。
実際、「考える」ことは大変にエネルギーを消費します。
たとえば、プロの将棋が対局後に体重が2~3kg減ることはよくある話だそうです。
彼らは対局中、私たちが想像できないくらいのレベルで「考える」ことをやっていますよね。
そして、「考える」というのは、何も勉強や将棋に取り組むことだけではありません。
「悩む」というのも、脳にとっては「考える」ことになります。
たとえば、
- 勉強しなきゃいけないな、でも、やりたくないな、どうしよう??
- 勉強、できるだけ後にしたいけど、お母さんに怒られる前っていつだろう??
- どの科目からやろうかな、算数? 国語? それとも…??
こういった「小さな悩み」も同じです。
「悩む」=「考える」ですから、脳はその分エネルギーを使います。
脳はエネルギーを節約したいですから、ここでエネルギーを使ってしまうと、「考える」本番である勉強はさらにエネルギーを使うことになるので、勉強したくなるわけです。
もしくは、「悩む」にエネルギーを使ってしまうと、本来の「考える」=勉強に使えるエネルギーが残り少なくなってしまい、効果的な勉強が難しくなるのです。
そのため、余計なエネルギーを使わないように「習慣化」することが重要になります。
習慣化のためのポイントを挙げてみます。
- 最初はとにかくやる
※親の強制力は必須 - 小さく・多く・楽しく
- 初めのうちは机の前に座るだけでもOK
- 200回繰り返す
- できたことにフォーカス
- やる気や意志に頼らない
- 手順を決めておく
- 阻害要因は取り除いておく
- 欲張らない
それぞれのポイントの詳細
1. 最初はとにかくやる
大前提として、小学生(特に低学年)のうちは、親の強制力は必須になります。
「習慣がなぜ大事か」
がまだ実感レベルで理解できていない子どもにとって、自主的に習慣を作ることは難しいからです。
たとえば、習慣化ができている代表例として「歯磨き」があると思いますが、歯磨きが習慣になるまで、子ども本人の自主性に任せたりはしなかったはず。
ですから、勉強させることは親の義務だと思って、毅然として子どもの勉強の習慣化に取り組んでください。
ただし、無理やりやらせるのは、それはそれで習慣化を妨げます。子どもへの言葉がけにはテクニックがありますから、それはまた別の記事で述べたいと思います。
2. 小さく・多く・楽しく
次に、「どれくらいで習慣になるのか」について。
ロンドン大学のフィリッパ・ラリー博士の実験によると、習慣化にかかる日数は平均66日だったそうです。
被験者(実験の対象となった人)の特性や行動の難易度によって、日数は18日だったり254日だったりと様々であったので、これもあくまで目安としてとらえておく数字かもしれません。
また、臨床心理学者のマクスウェル・マルツ博士は、著書『自分を動かす』で「私達の持っているイメージが変わるまで通常、最低でも21日かかります」と述べています。
ラリー博士の実験の最小日数が18日でしたから、だいたいこれくらいなのかも。
ほかには、脳科学の最近の研究で、行動の習慣化には200回以上の繰り返しが必要だということが明らかになっています。
個人的な経験から、この数字がもっとも妥当な気がします。
重要なことは、「できるだけ脳にエネルギーを使わせない」ということです。
そのために、「小さく」「たくさん」「楽しく」やっていくことが大事です。
小さくやることで、一つの行動に対する負担が減ります。
たとえば、それこそ最初は「机に座るだけでOK」にしてもよいくらいです。
たくさんやることで、習慣化につながることは、先に述べたとおりです。
当ブログとしては、「200回以上、繰り返す」を推奨したいと思います。
楽しくやることで、脳はそれに優先的にエネルギーを使うようになります。
たとえば、「やっていないこと」「できていないこと」を叱ったりするのではなく、「できたこと」にフォーカスして褒めてあげると、子どもは楽しんで取り組むことができます。
3. やる気や意志に頼らない
最後に、「やる気や意志に頼らない」について。
「やる気」や「意志」を使うこと自体が、「脳にエネルギーを使わせる」ことになります。
これまでの話から、それが逆効果なのはおわかりいただけるかと思います。
そのため、やっておきたいこと・注意したいことが次の3つです。
- 手順を決めておく
- 阻害要因は取り除いておく
- 欲張らない
手順を決めておくことで、「次、どうしようか?」と悩まなくて済みます。
手順には「スケジュール」も含まれますので、「家庭学習用の時間割」も作っておくのはとても効果的です。
そして、それぞれの時間では「どの科目」を「どの教材」で「どういったやり方」で取り組むのかも、あらかじめ決めておきます。
つまり、手順については、できる限り、「考える」ことをしないで済むようにしておくのです。
それによって、脳は「勉強」という本来の「考える」作業にエネルギーを集中しやすくなります。
阻害要因は、「集中力」のところでお話したことと重なります。
「部屋が散らかっている」「ゲームやおもちゃがある」「ベッドがすぐ近くにある」
といった、勉強以外に注意が向いてしまう要素のことです。
これらを取り除いておくことで、脳は「余計なことに注意を向ける」ということにエネルギーを使わなくて済むようになります。
そこで節約したエネルギーをぜひ勉強に使ってもらいましょう。
そして、何より大事なのは「欲張らない」こと。
親としては、ついつい、子どもに対して要求が大きくなりがちです。
でも、それは、まだ習慣化されていないことに取り組む際に、子どもにとっては大きな障害になります。
本人が「難しい」とか「嫌だなぁ」とか感じると、脳はその対象を「不要なもの」ととらえて、そこにエネルギーを使わないようになります。
それが勉強であった場合、子どもは勉強からどんどん遠ざかってしまう一方です。
ぜひ、
- 小さいことから始めて
- たくさん繰り返して
- 楽しんで
取り組ませてあげてください。
こんな感じで勉強時間を作ってみよう!
話が「勉強時間」からだいぶそれてしまいました。
ここまでを踏まえて、「じゃあ、実際にどれくらいの勉強時間にすればよいのか」について、考えてみたいと思います。
当ブログでは、ずばり、次の形を提案します。
「15分ごとに科目を変える」
「15分を1セットにして1日に勉強時間を決める」
なぜ、「15分」なのかは「集中力」のところでお伝えした通りです。
そして、15分ごとに科目を変えることで、注意が別のところに切り替わったり、脳の使う部位が変わったりして、「新しい15分」を始めることができます。
「家庭学習用の時間割」を作ると効果的であることは「習慣化」のところでお伝えしました。
ですから、その時間割を15分刻みにして、それぞれの時間での科目を決めておくのです。
あとは、「1日何セットできるか」ですが、これは個人差があるのではないでしょうか。
まずは「1日1セット」(=小さく)から始めて、子どもの様子を見ながら、子ども本人と相談しながら、1日のセット数を増やしていくとよいと思います。
増やす場合も、まずは「1日1セット」が習慣化されてからをオススメします。
急に増やすことは、「欲張り」ですよ!
15分ならボクでもできるね!
まとめ
- 勉強時間の目安は「15分」単位で考える
- 大事なのは、時間数より集中力と習慣化
- 集中力を保つためには
- 睡眠をしっかり取る
- 勉強する環境を整理整頓する
- 正しい姿勢で作業する
- 習慣化するためには
- 最初はとにかくやる
- 小さく・たくさん・楽しく
- やる気や意志に頼らない
- 「15分で1セット」
いかがでしたでしょうか?
この記事で述べた内容は、大人にも当てはまるものです。
子どもは親の背を見て育つ、とも言います。
まずは、私たち大人が自分の「勉強時間」を作って、子どものお手本になるのも一つの手ではないでしょうか。
ぜひ、子どもと一緒にお試しあれ♪
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